Hans J Wegner

ハンス・Jウェグナー

Hans J Wegnerハンス・ヨルゲンセン・ウェグナー

ハンス.J.ウェグナーは、デンマークのデザイン史において「黄金時代」と呼ばれる世代を代表するうちの一人です。1914年にデンマークとドイツの国境の町、トゥナーに靴職人のピーターの息子として生まれました。

1927年、ウェグナーが13歳の時に遭遇したのは、コペンハーゲンでの家具職人による展示会でした。そこには当時最高のデザイナーであるコーア・クリントやオーレ・ヴァンシャーによるデザインの家具がヨハネス・ハンセンやニールス・ヴォッダーという名工房とのコラボレーションで、まるで実験室のような熱気を放っていました。以降毎年開催されたこの展示会は、家具とデザインが生み出す未来をウェグナーに示し続けます。

この出来事に触発されたウェグナーは14歳の時に家具職人 H.F スターバーグに弟子入り。ウェグナーはそこで素材となる木への知識と感性を磨き、17歳で家具職人の資格を取得します。ウェグナーのこの経験は、後にデザイナーとして開花するための重要な素地となります。

その後コペンハーゲンに移り、1936年から1938年までコペンハーゲンの美術工芸学校に在籍し、家具デザイナーとしての基礎を学びました。

1937年にウェグナーがデザインした肘掛け椅子には、既に「無駄な要素を削り落とし、シンプルな構造で家具を見せる」というウェグナーのスタンスが見て取れます。

1940年、ウェグナーはアルネ・ヤコブセンとエリック・モラーが手がけるオーフス市庁舎の建築プロジェクトに誘われ、そこに納める家具をデザインしました。

1943年、ウェグナーは自身のデザイン事務所を開設。ボーエ・モーエンセンが初代家具デザイン責任者を務めたFDB(デンマーク協同連合連合会)やカール・ハンセン&サンなどにデザインを提供します。今日でもウェグナーの代表作として知られるCH24/Yチェア(ウィシュボーンチェア)はこの時期にデザインされました。

1953年にベッドメーカーであるGETAMA社との協働から生み出された「GE290」ソファも半世紀以上生産が続けられているロングセラーであり、質の良いヴィンテージは今なお根強い人気を誇ります。同じくGETAMA社からリリースされたGE258デイベッドも機能性と美しさで今なお人気の商品です。

数多くの作品を残したウェグナーですが、その名が世界的に広まったのは1949年にデザインしたJH-501通称「ザ・チェア」の成功によります。J.F.ケネディがテレビ討論会で使用した事が大きな契機であったことはあまりにも有名なエピソードです。

生涯で500脚以上の椅子をデザインしたと言われるウェグナーによるデザインの本質は、シンプルで機能的な外観により家具そのものが持つ魅力を最大限に引き出すことにあります。ウェグナーが培ってきた家具職人としての経験が、デザインと強度の両立という点でこの理念を支えました。また、ウェグナーの特徴でもある、自然な柔らかさを感じることのできるデザインも10代の時に培われた素材となる木々への深い造詣と敬意から生み出されました。

椅子が採り上げられる事の多いウェグナーですが、Andreas Tuck Furnitureとの協働で生み出されたダイニングテーブルやソーイングテーブルも名作の名に恥じないクオリティです。AT304やAT33は半世紀を経た今でも尚見る人を唸らせる造形美です。

ウェグナーはその生涯でLunning Prize、Grand Prix of the Milan Triennale、 Sweden’s Prince Eugen Medal、Royal Danish Academy of Fine Arts’ Eckersberg Medalなど、数々の名だたるデザイン賞を受賞しています。
また、王立美術大学からは名誉学士号が贈られているほか、英国ロンドンの王立工業デザイナー協会の名誉会員にも選出されています。そして、その作品はニューヨークのMOMAからミュンヘンのディ・ノイエ・ザムルングまで、世界中の著名な美術館でコレクションされています。

ダニッシュ・モダンという世界的な流れを作り上げた功労者の一人であるウェグナー。「椅子には裏側がありません。あらゆる側面と角度から美しくなければなりません。」という名言に、ウェグナーの家具デザインに対する深いこだわりをうかがい知ることができます。