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デンマークに「Omann Jun」という会社があります。 1933年の創業ですから、これを書いている2019年の時点で既に86年の歴史を誇ります。 そんなOmann Junですが、実はある誤解が世界規模で広がっていたのです。 創業者の孫であり、現責任者であるUlrich Omann氏から伺った真実をここにお伝えします。
"Omann Junのデザイナー"といえば"Gunni Omann"と連想される方は世界中にいらっしゃると思います。 なぜならば、1960〜70年代の雑誌には「Gunni Omannの製品」と表示されているからです。 「だったらデザイナーじゃないですか」 と言いたくもなるのですが、これが現代につながる誤解の元だったのです。 この出来事について、順を追ってご説明します。
Omann Junは1933年、Andreas Omannによって設立されました。当初はベッドとダイニングテーブルの製造販売からスタートしたそうです。 やがて二人の息子-Gunni OmannとBjarne Omannが会社を継ぎ、Gunniはアメリカ、Bjarneはヨーロッパのセールスを担当するようになりました。 この時期にチークやローズウッドを使用した美しいデザインのサイドボードなどを手がけるようになり、市場は順調に拡大していきます。 そしてGunniが受け持ったアメリカの雑誌でOmann Junが紹介された時、そこには「Omann Junの製品」ではなく「Gunni Omannの製品」と書かれてしまったのです。 以来、「Gunni Omannは多くの作品を手がけたデザイナー」として世に知られるようになりました。 この誤解はなかなか解かれないまま時代は変わり、現在はBjarneの息子であるUlrichに受け継がれています。
しかし、実際にはGunni Omannはデザインに殆ど携わっていません。セールスがメインであったため、そこまで手が回らなかったようです。 また、Omann Junは家族の誰かがデザイナーを務め、特定の個人ではなく「Omann Jun」がデザイナーであるというスタンスを持っています。 これは昔から変わることのない伝統のようで、Ulrich Omann氏も次のように書かれています。 "Therefore many believe that he was designer which is not the case. The products were designed by Omann Jun!" 【それゆえ、多くの人はそうではないにもかかわらず、彼:Gunni Omannがデザイナーであると信じたのです。製品をデザインしたのは(Gunni Omannではなく)Omann Junなのです!】
Omann Junについて、ここまで突っ込んだ内容を確認するきっかけはWEBの情報でした。 新たに商品を仕入れる際、できる限り正確に情報をお伝えできるよう、国内外の様々な情報源を当たります。 真っ先にOmann Junのウエブサイトから探してみたものの、「デザイナー:Omann Jun」の情報があるだけです。 「なぜデザイナー名を出さないのだろう?」と思いながら世界中のヴィンテージを眺めていると、デザイナーは「Gunni Omann」だったり「Omann Junior」だったり。何が本当なのか分かりません。 「よし、聞けるんだから直接本人に聞いてみよう」と思い立ち、ダメ元で連絡してみたところUlrich Omann氏本人からの返信があり、WEBで検索してもたどり着けない真実にたどり着くことが出来た次第です。 WEBは便利ですし重宝しますが、時には誤った情報が真実のように振舞うこともあります。 私自身も、今現在正しいと信じて発信している情報が間違っているかもしれません。 そういった怖さも芯に抱きながら、それでも素晴らしい家具に惹かれる方が素晴らしい物語にも触れることが出来るよう務めていこうと思います。